子犬を飼おうと思ってらっしゃる皆さんは、良い子犬を選ぼうと一生懸命になります。さて、良い子犬とはどんな子犬のことをいうのでしょう。よく言われるのは
「健康で」「性格が良く」「かわいい」子犬ということです。それではこれらの要素を一つ一つ考えてみましょう
まず「健康」について考えてみます。子犬が健康であるかどうかを判断するには、その子犬の健康を二つの方向から観る必要があると思います。多くの方がまず考えるのは「後天的な疾患を持っていないかどうか」ということでしょう。子犬の伝染病などもこの範疇に入ります。後天的な疾患のほとんどは、その管理が大きな問題となります。たとえばジステンパーやパルボなど、子犬の伝染病について考えてみれば、それらの原因となるウィルスが存在しなければ子犬は絶対にそれらの病気を患うことはありません。清潔な環境で、適切な運動と栄養、そして愛情をかけた飼育を行っていれば基本的には、健康にすくすくと成長するはずです。ある程度の年齢になると、人間の成人病と同じようにいくつかの疾患は出てくることがありますが、それらは加齢が原因ですので生き物である以上避けることの出来ない事柄です。
もう一つの「先天的な健康状態」の問題はその子犬の両親や先祖犬から代々受け継がれてきた疾患です。それらの多くは生後2ヶ月程度の子犬の時期には判別が難しいものが多く、その子犬を繁殖した人間のモラルこそが問われる、ある意味「人為的、作為的」な疾患ともいえます。それらの疾患を持った犬に子孫を残させなければ、そこでその遺伝上のマイナス要素を絶つことが出来るのです。もちろん、我々同様、子犬たちも生まれた時点で完璧に健康などということはあり得ない話ですが、少なくとも両親犬に遺伝的な問題がないかどうかを把握さえしていれば避けることの出来る問題となります。
健康な子犬であるということは、これら二つの要素を最低限満たしている状態の子犬であるということがいえると思います。
次に「性格がよい」子犬、について考えてみたいと思います。一言に性格がよいといっても、その「良さ」の部分は各ご家庭で様々なのではないでしょうか?
たとえば、「のんびりとした性格」になる犬を探されているお客様に「社交的で活発な性格」の子犬をお渡ししても、お客様は困られることになるでしょう。しかし「社交的で活発な性格」は一般的に「良い性格」と解釈される種類のものだと思います。ちょっとした矛盾ですね。
このように子犬に要求する性格は各ご家庭によって様々ということがわかります。意外に見過ごされがちなことですが、子犬の性格は両親犬からの遺伝で決定されるものです。つまり、穏やかな性格を持った両親犬からは穏やかな子犬が生まれやすい傾向にあり、よく吠える両親犬からは、必ずよく吠える子犬が生まれるということです。そして、やっかいなことに生まれつき親から受け継いだ性格は、基本的に変わらないということです。多くのショップでは「しつけ次第ですよ」と言うし、お客様も「しつけで何とかなる」と楽観的に考えているケースがあまりにも多いように感じます。そこに期待するのは、私の立場からすればあまりにもギャンブル的要素が大きすぎるように思われます。生まれ持った性格は、熟練した訓練士が訓練することにより無理矢理抑えることは出来ても、絶対に変えることは出来ません。
性格の形成に遺伝的要素が大きいことがわかっているのですから、ご自分の家庭によく合った性格を遺伝させやすい両親犬から生まれた子犬を探すことによって大幅にリスクを減らすことが出来るのです。
最後に「かわいい」という要素にふれてみたいと思います。これこそ、各人にとって好みは千差万別といったところでしょう。そして、前に触れた二つの項目「健康」と「性格」と同様、両親犬からの遺伝で決定される事柄であり、外見は文字通りどなたでも一目瞭然に見て判断できることだと思います。
ここにも落とし穴があります。それは、「子犬の見た目は、成長と共に変化する」ということです。たとえば、ミニチュアダックスフンドは、その血統によって少ない月齢の内にある程度の大きさまでグンと成長してそこからあまりサイズの変わらない系統と、少しずつ成長して、なかなか成長の止まらない系統とが存在するようです。傾向として、後者の方が生まれたときのサイズは小さくても、最終的に大きく育ってしまうことが多いようです。小さい頃の姿を見てしか判断できない消費者は、その子犬がどっちに属するのかを知る手段を持ちません。
この違いに対して、ある程度の判断を下すためには長い年月をかけて鍛えた「観る目」を持つことが大切です。当店の経営者である私も、今まで20年以上をかけてこの観る目を鍛えてきました。ドッグショーのハンドラーである以上、もっとも必要な商売道具であることは言うまでもないからです。子犬がこれからどのように変わっていって、どのような大人になるのかをある程度予測するのには、大変な経験は必要となります。そんな私でも古美術品の真贋は全くわかりません。同じように、ペットショップの店頭で遊んでいる子犬たちの中から、自分の好みの姿に育ってくれるであろう子犬を探すことはものすごく困難なことであることは明白です。
以上に上げた三つの要素をバランスよく備えている子犬こそが良い子犬であると思われます。良い子犬選びって本当に大変ですよね。
上へ